コンテンツプラットフォームを軸にさまざまなソリューションを展開している「株式会社はてな」。
「はてなブログ」や「はてなブックマーク」「人力検索はてな」など、そのサービスは多くの人の生活に馴染み、さまざまなシーンで利用されています。
同社は2019年の4月からドキュメント共有サービス「Scrapbox」を使い始めました。そして、現在はエンタープライズ版を導入し、サービス開発に関わる部署全体に浸透させるべく利用の促進を図っている真っ最中。
今回は同社におけるScrapbox活用の発案者であるhitode909様と、同社に入社して初めてScrapboxを利用したmaku693様の2名に、その使い方についてお話を伺いました。
hitode909様(以下「hitode」)
株式会社はてな サービス・システム開発本部 アプリケーションエンジニア
maku693様(以下「maku」)
株式会社はてな サービス・システム開発本部 アプリケーションエンジニア
途中からでも議論に参加可能。株式会社はてな「マンガチーム」のScrapbox利用
まず、会社の事業内容とお二人が所属するチームについて教えてください。
hitode「当社は“『知る』『つながる』『表現する』で新しい体験を提供し、人の生活を豊かにする″ をコーポレートミッションに掲げ、個人向けWebサービスや法人向けサービスを展開しています。僕とmakuさんはそのなかでマンガサービスの開発を行う『マンガチーム』に所属しています。出版社さんと協力してWebマンガサービスと市場を盛り上げて、マンガ文化を支えるお手伝いをしています。」
組織の中で、現在はどのような人がScrapboxを活用しているのでしょうか?
maku「もともとはマンガチームで使うためにhitodeさんが発案して導入しましたが、途中からエンタープライズ版に切り替え、サービス開発本部全体での導入を進めているところです。現在利用しているのは全体の半数くらいでしょうか。エンジニアとデザイナーを中心に、企画や管理系部門のメンバーにも徐々に広がっています。」
hitodeさんがScrapbox活用の発案者とのことですが、そもそもScrapboxを使おうと思った理由は何だったのでしょうか?
hitode「僕はScrapboxが発表された当初から友だちや家族間での情報共有でScrapboxを使っていました。そんな中、社内ではさまざまなドキュメントツールが使われていて統一されておらず、どこにどんな情報があるのかわかりづらい状態になっていたんです。その改善策を考えた時に、すでに僕にとって身近にあったScrapboxのことを思い出して。まずはマンガチームで使ってみようと提案し、導入前に1ヶ月ほどチームメンバーと使い込んで機能性を確かめたうえで、2019年の4月から正式に使い始めました。」
その他のツールも検討されたのではないかと思いますが、その中からScrapboxを選んだ決め手を教えていただけますか?
maku「まずは、とにかく同時編集しやすいという点だと思います。他にも複数人で同時に編集できるツールはありますが、ちょっと大袈裟な感じがするというか、敷居が高くて自分が編集に参加するときに躊躇してしまいます。Scrapboxは例え途中から参加しても気軽に議論に参加できる感覚がとても心地良いですね。ディスカッションやアイデア出しにとても向いていると思います。」
用途は議事録から採用活動まで。助け合いで情報が成長するのがScrapboxの面白さ
現在は具体的にどのような用途でScrapboxを使っているのでしょうか?
maku「スタンドアップミーティングのためのアジェンダ作成などでよく使いますね。事前にみんなが議題を書いておいて、ページを見ながらミーティングを進めます。議論をしながらページをみんなで更新していくと、ミーティングが終わる頃にはそれがそのまま議事録になっているので、改めてタスクを整理する必要もない。他にも、面接用の会社紹介用資料もScrapboxで作成しています。面接に来てくださる方向けに、対象となるチームや親和性の高いプロジェクトについて紹介するScrapboxページのリンクをまとめておくことで、その方に合わせた情報がキュレーションされた状態になり、面談での説明がしやすくなります。あとはインターン向けのページも準備していますね。来てくださった方にプレゼンテーションモードで業務内容やプロジェクトについて説明しています。」
Scrapboxの気に入っているところはどんなところでしょうか?
hitode「makuさんが話したこととも重なりますが、やはり書くときのハードルが圧倒的に低いということでしょうか。Scrapboxを導入してから明らかに社内のアウトプットの文章量が増えました。当社は以前からテキストに主軸を置いたサービスを展開してきたので、社員も皆書くことが好きだと思うんです。だからこそ、批判の声は少なく、すんなり導入できた感覚があり、親和性は高かったのかもしれません。また、リンク機能の使いやすさもポイントですね。曖昧な言葉などにリンクを貼っておくと誰かが追記してくれるので、ドキュメントが日に日に整理され、情報が深まり、成長していきます。」
maku「わからないことがある場合『#誰か書いて』とタグ付けするのは、みんなよくやりますね。タグに気付いた人が自分の知っている有用情報を追記してくれます。そういうやりとりができるのは便利でもあり、同時にScrapboxの楽しさを感じる瞬間ですね。」
クライアント情報もセキュアに管理。エンタープライズ版の魅力
御社では当初クラウド版からご利用をスタートされましたが、その後エンタープライズ版に切り替えましたよね。その理由を教えていただけますか?
hitode「まず、チームごとにある程度プロジェクトを分けて使いたかったので、エンタープライズ版の方が適していると感じました。それに、マンガチームでは出版社さんから預かった機密性の高い情報も扱うため、セキュアに管理したいという思いがあり、ある程度制限された環境が理想的でした。」
maku「エンタープライズ版にすることで、社員が外部には出したくない仕事に関する個人メモも、自分のプロジェクトの中で安心して作成できます。ときには個人プロジェクトで一回下書きしたことをコピペして共有プロジェクトやメッセージで発信するといった使い方もできるので便利です。」
現在はサービス開発本部全体での利用に向けて啓蒙活動を進めているそうですが、具体的にどのようなことを行なっているのでしょうか?
hitode「初心者の中には『記法が難しい』と感じる人もいると思うので、僕がインストラクション会を開催してレクチャーしています。またSlackでScrapboxの問い合わせ専用のチャンネルを用意して質問に答えたりしています。大事なポイントは、『自分自身が率先して書きまくる』ということですね。何も手本がないまっさらな状態で『自由に書いてください』と言われるのが一番厳しいですから。Scrapboxの最大のハードルは『始める』ということ。逆にいうと、始めてしまえば誰もが『これ最高じゃん』と言えるツールだと思います。」
maku「確かに、hitodeさんは誰よりもよくページを書いていますね。ミーティング中に議事録を書きながらどんどんキーワードにリンクをつけていくとか。その時点でリンク先があれば文字が青くなったり、なければ赤くなったり……hitodeさんの操作を見ながら、ミーティングに参加しているメンバーも自然と使い方を覚えていきます。」
それでは最後に、今後のScrapbox利用の展望をお聞かせください。
hitode「Scrapboxを導入してから1年弱経ちましたが、情報が予想以上に急スピードで蓄積され、有用なものになっていると実感しています。今ではエンジニアの中では『困ったらScrapboxを見る』という発想が共通認識になっていますが、全社で同じ感覚で運用できるところまで定着させたいですね。」
hitode909様、maku693様、ありがとうございました!
(文・写真/下條信吾)