業界:製造業・メーカー
用途:組織内のナレッジ共有
課題:情報の背景やプロセスがわからず、同じ議論が何度も再発していた
| 記事の要約 |
- 社内の業務プロセスのDX実践経験を標準的な手順「型」にして社内展開する際、その背景やプロセスが共有されないため、型が形骸化したり、納得感が薄く応用がされない場合があった。社内展開したツールを実践する中で新たなナレッジが生まれているはずだが、部署を超えたナレッジシェアには課題を感じていた
- これらの課題を解決するために、情報の背景やプロセスもナレッジとして蓄積できるHelpfeel Cosense(コセンス)を導入。まずは使うことを習慣化するために、最初は利用方法をあえて決めず、自由に使って効果を実感してもらうことから運用をスタートした
- グループ内ではCosenseにアクセスすることが習慣になり、曖昧な記憶に頼ることがなくなった。他のメンバーの意見も共有されるので、考えが深まりやすくなった実感がある。今後はプロセスDX推進室の他グループにも利用を促すとともに、ナレッジを大切にする文化づくりをしていきたい
株式会社リコーは、お客様のDXを支援し、そのビジネスを成功に導くデジタルサービス、印刷および画像ソリューションなどを世界約200の国と地域で提供しています。
同社は、「プロセスDX」という業務プロセス改革を全社で実践しています。「プロセスDX」とは、社内のあらゆる業務のプロセスを可視化し、デジタルとデータを駆使し最適化を図る取り組みです。
ワークフロー革新センター プロセスDX推進室では「プロセスDX」において、それを標準化した「型」を社内展開するにあたり、その背景やプロセスがわからないために何度も同じ議論に陥ってしまうという課題を抱えていました。そこでナレッジ共有ツールとしてCosenseを導入。過去の曖昧な記憶に頼らざるを得ないことが減り、導入前の課題も解消されつつあることを実感しています。
Cosenseの導入理由や活用方法、仕事の変化などについて、ワークフロー革新センター プロセスDX推進室 アナリティクスグループの櫻井 陽一様、鈴木 優理子様に話を伺いました。
業務を標準化し、社内展開する際にぶつかった壁
ワークフロー革新センター プロセスDX推進室 アナリティクスグループ 櫻井 陽一様
── はじめに、皆さまの業務内容を教えてください。
櫻井様 ワークフロー革新センター プロセスDX推進室は、リコーが企業理念の「使命と目指す姿」として掲げる「“はたらく”に歓びを」の実現に向けてデジタルサービスを推進する中、社内のDXや業務改善を支援する部門です。
単純作業を削減して創造性のある仕事へシフトできるよう、ビジネス上の課題を見つけて解決手段を提案し、効果が見られたものは多くの社員が利用できるよう、標準化して展開しています。体制としては、取り組むテーマごとにチームを組んで、関係する業務部門や開発部門のメンバーと一緒にプロジェクトを推進しています。
── ナレッジ共有ツールの導入には、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
櫻井様 私たちは新しい事例の実践から型作りまでを担当しており、型を各部門で実践してもらうステップでは、別チームが担当することがあります。できあがった「型」を他チームに説明したり、全社に展開したりする過程で、「なぜこのような型になっているのか」「どのような話を経てこの標準化ができたのか」といった質問が何度も起こっていたことがきっかけです。
その原因は、型をドキュメントにして蓄積していたものの、その背景にある思想やできあがるまでのプロセスは記録されていなかったことにありました。綺麗にまとまったドキュメントでは背景が伝わりきらず、型が形骸化したり、納得感が薄く応用がされないことが起きていました。
さらには、新たな施策を業務部門が実践する中で新しい気づきが生まれているはずなのですが、そうしたナレッジは個人に留まってしまっていることにも悩んでいたのです。
私たちプロセスDX推進室アナリティクスグループは少人数で企画を担当する部署であり、実働や定着は多くの部門の力を借りて実現していきます。
良いDXを実現するには、他の人が企画したことや、現場で実働している中で気づいたことや工夫したこともキャッチして改善につなげ、定着させていかなければなりませんが、部署を超えたナレッジシェアはどうしても難しく、横展開できていない状況でした。
この状況をなんとか変えようと思い、まずは私たちの業務プロセスを可視化することにトライしました。しかしながら私たちの仕事は企画業務のため、書き出したプロセスに則らないケースが多く発生してしまい、解決策にならないという結論に至りました。
── 抱えていた課題を解決するために、Cosenseを導入した理由を教えてください。
櫻井様 Cosenseを知ったきっかけは、仕事で交流があった社外の方からの紹介でした。私たちのような型化が難しい情報を取り扱う場合、Cosenseが良いよとお勧めしてくださったんです。使ってみないことにはどのように活用できそうかがわからないので、まずはトライアルで利用することにしたのです。
トライアルで使ってみる中で、だんだん良さがわかってきました。Cosenseは気軽にメモを書き溜めることができて、書きながら考えを深めていけるナレッジ共有ツール、私たちのような企画チームにぴったりです。類似のツールと比較検討したり、併用することを考えたりもしたのですが、ツールの思想と自分たちが目指す姿のフィット感をふまえると、Cosenseがベストだろうと判断をしました。
Cosenseに慣れるため、自由に使うことから運用をスタート
ワークフロー革新センター プロセスDX推進室 アナリティクスグループ 鈴木 優理子様
── トライアルでは、誰がどのようにCosenseを使ったのでしょうか。
鈴木様 型作りを担う私たちアナリティクスグループの5名で使い始めました。Helpfeelのコンサルタントからアドバイスをいただき、まずは書くことに慣れるために、1カ月で100ページ作成することを最初の目標にしました。
櫻井様 書く内容はあえて決めず、自由に使うことからスタートしましたね。業務で使う用語集を作る人もいれば、議事録を取ったり、プレゼンテーション準備で使ったりする人もいました。業務で困ったことを記録しているケースもありました。
Cosenseは今まで触れたことがないような作りをしています。組織での情報管理はフォルダを作って、命名規則を作って、ルール通りに整理するのがよくある姿。一方Cosenseにはフォルダがありません。雑に書いたメモに同僚が現れてアドバイスをくれたり、会議のアジェンダを書いていたら会議前に回答が来て解決したりすることもあります。このようなCosenseならではのコラボレーションを少しでも体感してもらうことを優先しました。
── トライアル期間を終えて、ユーザーからどのような感想があがりましたか。
櫻井様 階層構造がないナレッジ共有ツールに慣れないという感想もあったものの、「それまで使っていたツールに比べて、考えることに集中できて楽しかった」という声が多くあがりました。
運用をスタートする際のHelpfeel社との打ち合わせで、使い方を実演してもらったのも大きいです。Cosenseに議論の内容を書き残していく様子を見て、業務上の決定事項だけでなく、そのプロセスや感想も書いていくものなんだ、という共通認識をもつことができました。
価値のあるナレッジがスムーズに共有され、仕事の効率性も精度もアップ
── トライアル期間後の運用状況はいかがですか。
櫻井様 業務のあらゆる場面で効率化ができており、情報共有がスムーズになっていると感じています。
定例会議で話し合いたいことは事前にCosenseに書いておいて、議論しなくとも判断できることはCosense上で決められるようになりました。業務の型を作るにあたってのたたき台の作成や、プロジェクトの進め方の共有などもCosenseで完結しています。さらに、新しく異動してきたメンバーへの業務知識の共有もしやすくなりました。
これらに共通しているのは、曖昧な記憶に頼ることが少なくなった点です。雑でも良いのでメモが残っていれば、過去の経緯がかなり思い出せるんです。
鈴木様 私はアナリティクスグループに異動してきたばかりですが、参画前の議論内容もCosenseに残されているので、経緯を理解したうえで業務に向き合えるのはありがたかったです。「この情報はさすがにCosenseにもないだろう」と期待せずに検索したら、欲しかった情報が見つかったことが何度もあります。
他のメンバーがセミナーを受講した際のメモも残されており、自分以外の視点での感想に触れることで学びが得られています。これまで、こうした情報は個人に閉じられていたことを思うと、ナレッジを共有する価値を感じます。
── 仕事の進め方や、組織の雰囲気に変化は感じますか。
櫻井様 働き方が変わりました。打ち合わせでは常にCosenseの画面を開き、メモを書き溜める習慣がついたので、過去に話した重要な内容がどこにも記録されていないことはなくなりました。仕事そのものの精度も上がったと感じています。
また、他のメンバーの活動に参加しやすくなったという手応えもあります。たとえば、今日のインタビューの準備も、鈴木がページを作ってくれていたので、自分のメモをそこに追記しておいたんです。Cosenseならではの動き方ですね。
こうしてナレッジが蓄積されていくにつれ、決まったことの背景がわからない、共有できていないという当初の課題感も解消されつつあります。Cosenseが、新メンバーの助けになるインフラにも育ってきていると感じているところです。
── 逆に、運用上で課題に感じていることはありますか。
櫻井様 ノウハウ共有をすすめるためCosenseを使ってもらう部門を増やそうとIDを発行したのですが、日常的に使うメンバーが偏るという課題が生じてしまいました。具体的な普及活動が必要だと感じ、今は鈴木が推進担当になっています。
鈴木様 上長から方針を示してもらったうえで、私が使い方をレクチャーしています。定期的に発信することに加え、他グループの定例会議にも参加してCosenseの使い方の質問を受けたりもしました。
さらに、Cosenseの便利な使い方をナレッジとして蓄積しつつ、なかなかアクセスしないメンバーにはチャットで伝えることも行っています。こうした施策を続けて、新しいツールを使うことが好きだったり、自分のアイコンを入力する面白さを感じてくれたりするメンバーを中心に、興味をもつ人を少しずつ増やしているところです。ただ、思ったことや軽く口に出したことをオープンに共有することへの抵抗感をもつ人もいるので、もう少しフォローが必要だと考えています。
Cosenseでは自分のアイコンを設定できる(イメージ)
現在は業務上必須のツールにはしていないので、興味をもってくれた人が使うようになり、その様子を見た人が新たに興味をもつ、といったことを積み重ねてユーザーを増やしていきたいと思っています。
多くの価値を生み出すために、ナレッジを大切にする文化づくりを進めたい
── 今後の展望をお聞かせください。
鈴木様 業務プロセスを事業・機能部門と共同でDX化を実践・標準化し、型として全社に広める、全社最適プロセスへの変革を推進するというワークフロー革新センターのミッションを果たすために、私たちアナリティクスグループ以外のメンバーにもCosenseをもっと活用してもらいたいと考えています。
目指すのは、ナレッジを大切にする文化づくりです。文脈もナレッジとして充実させることを大切にし、社内で生み出された価値を社外のお客様にも提供していけるようにしたいと思います。
リコー本社の外観
── 最後に、同じような課題を抱えている企業へメッセージをお願いいたします。
櫻井様 企業が力をつけていくためには、業務で得られたナレッジを広い範囲で有効活用し、ナレッジを中心とした文化づくりを進めることが必要です。Cosenseはまさにナレッジから価値を生み出し、組織文化へと昇華させられるツールだと感じています。
ただ、私たちの場合、メンバー全員でこうした共通認識をもちたいと思っても、Cosenseの価値を理解されにくいケースがありました。それでも粘り強く推進策を続け、道半ばではあるものの効果を少しずつ実感しているところなので、この経験が同様の課題を抱える皆さんにとって参考になれば幸いです。