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組織文化が育つナレッジマネジメントに挑戦。ツール変更1年弱で3人に1人をヘビーユーザーに

株式会社ビズリーチ | Cosense導入事例

· #会社で使う
ビズリーチイメージ
ビズリーチロゴ

業界:人材・HRテック
用途:組織内のナレッジ共有
課題:情報の分断や検索性の低下によりナレッジが活用されず、組織文化として定着しない

|  記事の要約  |

  • エンジニアの増加に伴い細分化された開発チーム。スピード維持を重視した結果、情報は分断され、既存のナレッジマネジメントは次第に機能不全に陥っていった。「どこに何があるのか分からない」「同じ情報がいくつもある」ーーこうした課題の根底にあったのが、階層構造を前提とした既存ツールの限界だった
  • そんな中で見出したのが、リンクベースでネットワーク的に情報をつなげるHelpfeel Cosenseだった。自由度の高さと「まず書き出す」ことへの心理的ハードルの低さが決め手となり、従来の階層構造では難しかった柔軟な情報設計が実現可能に
  • ツール変更だけではなく、現場主導の文化醸成をセットで進めたことが功を奏し、わずか1年弱で全社の3分の1が「週3回以上、閲覧・編集する」ヘビーユーザーとなった

個人が持つ知識を組織の資産とする取組であるナレッジマネジメント。会社として取り組むべき課題であるが、「うちでは難しそう(誰も書かなさそう)」「ツール導入当初は活用されていたが、今は誰も更新しておらず利用しなくなってしまった」といった声をよく聞きます。全員の主体的な参加があって初めて真価を発揮できるという特徴からも「どうやってメンバーの習慣にするか」が肝になる取り組みといえるでしょう。

即戦力人材と企業をつなぐ転職サイト「ビズリーチ」を運営する株式会社ビズリーチの開発部門では、より高い水準のエンジニアリングを全員で目指す文化づくりを行っています。その一環として、ナレッジマネジメントの仕組みづくりも推進されています。

その第一歩としてナレッジマネジメントツールを「Helpfeel Cosense(コセンス)」に切り替えた結果、1年足らずで全員が利用するようになり、3人に1人は書き込みも活発なヘビーユーザーとなっているそうです。ナレッジマネジメントが文化となることで得られる効果や、活用定着の秘訣などを、導入推進者の菊池 信太郎様(プロダクト本部 プラットフォーム統括部 統括部長)にお伺いしました。

階層構造のツールで「こうもり問題」に直面、改善も限界に

プロダクト本部 プラットフォーム統括部 統括部長 菊池 信太郎様

プロダクト本部 プラットフォーム統括部 統括部長 菊池 信太郎様

――はじめに、ご担当の業務についてお聞かせください。

当社の柱の一つである転職サイト「ビズリーチ」の一部門の開発責任者をしています。並行して、採用関連プロダクト全体を通じたシステムアーキテクチャの見直しや、それに伴う新たな組織構造に関する方針策定にも関わっています。

――「ビズリーチ」はサービス開始17年目、菊池様は入社8年目(2025年4月時点)とのことですが、開発業務の中で、現在どのような課題がありますか。

まず、当社の状況についてお話させてください。
当社は今、一言で申し上げると、「よりよいエンジニアリング文化」を作るための変革期を迎えています。

提供するサービスが増える中でも開発スピードを維持するため、「ビズリーチ」を構成するシステムと、その開発チームは、「求職者様」「採用企業様」「ヘッドハンター様」といった利用者別に細分化してきました。チーム規模を小さく保つことでスピードを維持できた一方で、サービス成長に伴い増加する共通部分の取り扱いに課題が生じるようになりました。

共通部分を効率的に開発していくために、チーム構成を大きく見直しています。共通のプラットフォーム部分のシステムとその開発チームを切り出して、「疎結合(※1)化」することで、柔軟にスケールできる環境を整えるのが、目下の大きなテーマです。※1・・・システムやその開発チームが、それぞれ独立して意思決定や開発を進められるように、システムやプログラムの構成要素同士が密接に依存しすぎないよう設計すること

万能なシステム構成や組織構造はありません。変わり続ける事業の状況に合わせてシステムも組織も絶えず最適な形に変えていくことが重要です。しかし、単に構成を変えるだけでは逆に開発スピードが低下する可能性があります。柔軟に変化に対応していくためにはメンバー全員の認識を揃えておく必要があり、そのベースとなる共通言語や組織文化を醸成する上では、各自が持つ知識を組織全体で共有するためのナレッジマネジメントの実践が非常に重要だと考えています。

私が入社した2018年当時、当社の開発部門ではすでに全社導入したツールを用いたナレッジマネジメントに取り組んでいましたが、更新が途絶えた項目も目立ち、今後もプロダクトの継続的な成長を見据えると管理が不十分な状況でした。
これでは、社内で積み重ねてきた知識や経験に基づいた意思決定が困難だと考え、改善に動きました。
私自身がドキュメントを積極的に残すとともに、集中的に更新が必要なページには担当者を割り当てるといった改善を進めてきました。ただ、そうした従来のやり方の延長線上では、満足できる水準まで到底たどりつかないとも感じていました。

――なぜ運用改善では追いつかなかったのでしょうか。

現在、「ビズリーチ」のプロダクトの開発部門は、私が入社した頃の3倍以上の多くの人が所属しています。全社共通でConfluenceを使っていますが、スピード維持のために細分化した組織構造のため、ドキュメントもチーム別で作成され、情報の分断が進んでしまっていました。「探しても見つからない」「見つかるが同じトピックが複数存在し、どれが正しい情報なのか、どこを更新すべきか分からない」といった検索性・信頼性の低下が起き、積極的に参照・更新されない状況になっていました。

そうした状況の中で階層構造型のツールを使っていたことも、私たちのナレッジマネジメントが進まない要因の一つでした。階層構造で整理されたドキュメントは全体構造を把握しやすく有益ですが、情報量が増えた中では構造を捉えるのも構造を組み直すのも非常に時間がかかります。大きな変更が生じない静的な情報の整理にはとても有効ですが、展開次第で分類方法そのものが変わりうる動的な情報には、あまり適していません。状況に合わせて組織構造も情報構造も柔軟に変えたい私たちにとっては階層構造が制約となっていました。

加えて階層構造には「複数項目に関連するトピックを、どの項目に分類するか(=こうもり問題)」という難題が常について回るため、特に入社して間もないメンバーは、書き込むのをためらわせる要因となっていました。

あらゆる情報の共有を目指し“気軽書き出せる” Cosenseを選択

プロダクト本部 プラットフォーム統括部 統括部長 菊池 信太郎様

プロダクト本部 プラットフォーム統括部 統括部長 菊池 信太郎様

――そこで2023年8月から、開発部門のナレッジマネジメントツールを順次Cosense(Scrapboxから2024年5月に改称)に移行していく決断をされたのですね。

はい。組織が拡大し、組織間で調整のための会議も大幅に増えたことで、組織運営の効率化と情報共有の重要性を強く認識しました。ナレッジ共有ツールを活用することで、事前の情報共有によって会議が効率化され、テキストのやり取りで済む会議は削減できます。また、現場から遠くなっていても一次情報に基づいて的確に状況を把握し、意思決定も行えます。こうしたテキストを活用したナレッジ共有が、部門全体のパフォーマンス向上に繋がると考えました。

こうした文化を根付かせる出発点として、新たなツールへの切り替えを決断しました。さまざまなツールがある中でCosenseを選んだのは、私自身がCosenseを個人で利用した経験があり、「ページ間をリンクでつなぐ」というコンセプトと高い操作性に感銘を受けていたというのが大きな理由です。一度決めた分類・配置を変えづらい階層構造と異なり、リンクを用いたネットワーク構造を採用するCosenseは再編・修正の自由度が高く、気軽に書き出せるため活用のハードルを下げられると期待しました。

自由度が高く多様な使い方ができる反面、組織として継続的に運用できるか懸念もありましたが、プレ導入で試行錯誤を重ねる中で、

  • ページの管理を開発チーム単位で委任する(自分たちで管理できる)
  • 個別ページへのリンク一覧となるポータル的なページも設ける(初めて参照する他チームのメンバーでも容易に参照できるようにする)

    という方針で上手く運用できる感触が得られたため、本格導入に踏み切りました。

――導入の推進にあたって、どのような方針を立てられましたか。

重要な一次情報が記録され容易に見つかることを重視し、「メモや議事録など、あらゆる情報をCosenseに残す」という大原則を示しました。一方で、細かいルールはあえて決めませんでした。

プログラミングにおける厳格な記法や型に慣れたメンバーが多いこともあって「ナレッジマネジメントも共通ルール定めるべきではないか」という提案もありました。しかし、開発部門に限らず社内各所から気軽に見て書き込んでもらいたいと考えていたので、開発チーム単位のローカルルールはある程度許容しつつも、全体としての決まり事は最小限に抑えています。

週3以上で閲覧・編集するユーザーが3分の1を突破
組織文化が育つナレッジマネジメントに挑戦。
ツール変更1年弱で3人に1人をヘビーユーザーに

プロダクト本部 プラットフォーム統括部 統括部長 菊池 信太郎様

――現在のCosenseの利用状況をお聞かせください。

当社のCosenseは現在、エンジニア・デザイナー・PdM(プロダクトマネージャー)といった開発部門の全員に加え、営業など社内のステークホルダーを含む約250ユーザーが利用しています。

この間、ナレッジの閲覧状況はおおむね右肩上がりを続けており、本格運用を開始した23年8月末から9ヶ月経った24年5月末の実績比較では、閲覧回数で3倍超、閲覧ページ数で5倍弱まで増加しています。

――閲覧だけでなく、活発に書き込む人も多いそうですね。

現在月間の全ユーザーによる閲覧回数は約7万件、編集回数は約5万件です。主な担い手である「閲覧と編集を週3日以上連続で行う」ヘビーユーザーは、導入当初は全体の1割程度でしたが、直近では3分の1を超えるまでに増加しています。

――この間、菊池様ご自身もナレッジマネジメントの定着を実感されていますか。

はい。数字にも現れているようにツールが日常的に使われており、文化として根づきつつあると感じます。

当社でも様々なツールを使っていますが、起点はCosenseです。「まずCosenseを参照すれば、だいたいの情報は見つかる」状態を目指し、SlackやConfluenceなどに分散した情報を集約したり、各所への導線を整備してきた効果が現れています。欲しい情報にたどり着くスピードが上がったと感じるのは私だけでないようで、アンケートでも「情報の検索性が高まった」という回答が多いです。

開発部門のマネジメントという立場上、私に直接質問するのが早いことも多数あり、同じような問合せに対応する機会も少なくありませんでした。今は問い合わせに回答した際「Cosenseにも書いておいて」とお願いすれば他チームへも簡単に情報共有できるようになり、助かっています。


「労力をかけて、初めて良いものができる」

プロダクト本部 プラットフォーム統括部 統括部長 菊池 信太郎様

――ナレッジマネジメントツール自体の機能もさることながら、菊池様はツール導入という機会をとらえ、変化に時間がかかる組織文化に対して有効な働きかけができるメリットを強調されています。今回は、実際にどんな取り組みをされたのですか。

ナレッジマネジメントのベースになるのは、何でも文字にして残すドキュメンテーションの習慣です。そこで私はCosense導入時にその意義や使い方について周知徹底を図りました。チームごとに1時間程度の時間を設け、ツールの使い方だけでなくドキュメンテーションを徹底する意義もあわせて伝えました。

また、文化の体現者として自ら実践する姿勢を示すことも意識していました。社外のベストプラクティスの紹介や、新入社員向けのオンボーディング資料を私自身がCosenseで作成すると同時に、振り返りもCosenseで行いました。

メンバーとの双方向のコミュニケーションも意識しています。活用推進を行う過程で、メンバーからのフィードバックを真摯に受け止め、メンバーが発見した活用法を全体に紹介するなど、Cosenseでの取り組みが「自分ごと」になるように働きかけました。

これらのアクションとともに活用状況のモニタリングにも注力しました。使い出したタイミングに好ましいフィードバックがあると継続利用につながる可能性が高まります。誰かがSlackで「Cosense」「Scrapbox」というワードを使ったときや、従来のナレッジマネジメントツールで新規作成を行ったときは全て私に通知が届くよう設定し、その都度スタンプやコメント、アドバイスを送ったり、Cosenseへの誘導を促したりといった働きかけを続けてきました。

こうした地道な活動を続ける中で、趣旨に共感してくれるメンバーが出てきました。Cosense上で積極活用を呼びかける、エバンジェリスト的な活動が自然に始まったのです。本格導入から間もなく1年となる現在では、私が呼びかけなくても、日々の業務に関する一次情報のテキストが自然と蓄積されるようになっています。

どのようなツールやアプローチを選んだとしても、これらの動きは欠かせないと思っています。ドキュメンテーションを習慣化する組織文化づくりに必要なものは地道な積み重ねで、決して簡単なことではありません。マネジメント層が意思をもってしっかりコミットし、労力をかけて、初めて良いものができると思います。そうするだけの価値は間違いなくあるはずです。

――最後に、今後のCosenseの活用に向けた展望をお聞かせください。

まずは一次情報の記録と整理から着手し、プロジェクトの運営、プロダクトの評価などについても、高い水準でメンバー全員が共有することで、同じ言葉で話す「よりよいエンジニアリング文化」のベースができてきたという手応えを感じています。

文化づくりはツールの導入だけでは実現できず、継続的な活用促進に関する発信やリーダー自らの実践が欠かせません。その上で、Cosenseのような適切に設計されたツールを用いれば大規模な組織であってもメンバーの行動を変えられます。

引き続きCosenseの活用を通じ「知識によって付加価値を創造する」という、本来の意味でのナレッジワーカーを育成する取り組みを行っていくつもりです。例えば「議論で得た結論部分を切り出して別ページにまとめ、そこにリンクを張って確認してもらう」など、一次情報をもとに精度の高い二次情報を共有する手法についても、今後研究していきたいと考えています。